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5.食事の支給についての課税関係は?

(1)食事の支給
 会計事務所として顧問先の皆様の帳簿を拝見していると度々お目にかかる現物給与に、「食事代」があります。
 従業員や役員に対する食事の支給のことですが、これも現物給与である以上、その支給を受けた側にあっては所得税が課されるのが原則である事は前述のとおりです。
 ただし、一定の要件を満たすならば敢えて課税をする必要はないとされています。
 では、その要件とはどんなものでしょうか?

(2)お昼ご飯は要注意。
 昼食に限ったことではありませんが、宿日直や残業に対する食事以外の食事(通常の勤務時間内における食事)の支給をする場合、その食事の価額の半額以上を本人が負担し、かつ、会社等使用者側が負担する額が月額3,500円以下であるならば給与としては課税されません。
 例えば、昼時に近所のソバ屋から700円のカツ丼を月に十日、出前してもらったとして、合計7,000円。その半額の3,500円を食べた本人の給与から「昼食自己負担」として天引きすれば右の要件を満たす事になるわけです。
 なお、使用者側の負担額が3,500円を超える場合は、使用者負担額の全額が給与とみなされ課税されますので要注意です。
 また、当然のことながら食事の支給に代えて3,500円以下の金銭を支給した場合は給与手当として課税されます。

(3)食事の価額はどう算定する?
 前例のように店屋物など他から購入するケースでは購入価額=食事の価額となりますが、社員食堂等を有していて、自社調理している場合は、その食事の材料等、直接要する費用をもって食事の価額とします。したがって水道代、やガス代の間接費用まで考慮する必要はありません。
 また、自社の社員食堂であっても、委託業者が入っていて、その業者が食材の調達から調理まですべて行まっている場合には自社調理とは認められず他からの購入に準じて計算する必要があります。

(4)残業食は課税されない?
 いままで見てきた昼食等と異なり、通常の勤務時間外に宿日直や残業をした者に対して支給した食事については、全額会社負担であっても課税されません。
 ただし、この残業食の場合も食事の支給に代えて、同額の金銭を支給した場合には昼食等と同様、給与手当として課税の対象となります。この点に関しては、例えばソバ屋の領収書等、現物支給であることの証を取っておくことが必要です。
 また、たとえ夜の8時、9時であってもそれが交替制勤務である者の夜間勤務であるとか、或いは守衛等のようにその時間が通常の勤務時間である場合は、そこで支給される食事は残業食には該当せず、前述の昼食等と同じ取扱いがなされます。

(5)深夜勤務者に対する特例
 食事の現物支給に代えて金銭を支給した場合、給与手当として課税されることはいままで述べてきたとおりですが、その例外として取扱われるケースがあります。
 労働協約や修業規則において正規の勤務時間が深夜(午後10時から翌日午前5時の時間帯)になってしまうような勤務者に対しては夜食の提供をすることが難しいという事情が生じることがままあります。日中であれば、一定要件のもと食事の支給ができるのに、深夜勤務である故にそれもかなわず他方、金銭支給では課税されてしまうというのでは、バランスを欠くといわざるを得ません。
 そこで、この深夜食の支給に代えて一回の勤務につき300円以下の定額を通常の給与に加算して金銭支給した場合には課税されないこととされています。

(6)給与であるなら源泉徴収
 ここまで見てきたいくつかの要件等と照らしあわせてみて、その食事の支給が給与として課税されるケースであるならば通常の給与と併せて所得税額を計算し源泉徴収をしなければなりません。

(7)消費税の取扱いは?
 これまで見てきた食事の支給に関して、それが非課税限度額内であるかどうかの判定は「税抜き」額で行えばよいとされています。
 例えば、昼食の支給にあたって会社負担額が税込み3,675円であるならばそれに100/105を乗じて3,500円として判定することになります。
 また、食事の支給が「給与」として所得税が課せられる場合であっても、その食事原価について消費税の計算上は課税仕入れに該当します。
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