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2.節税の具体例は?

<3>社長から土地を借りるとき

 会社が社長個人から土地を借りて、その土地のうえに会社名義の建物を建てるというケースはよく聞くところです。このような場合において、都市部等の借地権の取引慣行が成熟している地域では、借地権利金をいくら払うべきか、地代をいくら支払うべきかについて、十分に検討しなければなりません。
 会社が社長の土地を借りて、通常支払うべき権利金を支払わないと、会社は、「借地権の認定」を受け、借地権価額相当額の受贈益を計上しなければならないことになります。
 これを避けるためには、会社は、社長へ権利金を支払えばよいのですが、会社の権利金支払能力や権利金相当額が社長の収入とされるため社長の所得税の負担が問題となってきます。
 一度に多額の支払いや税負担をしきれない場合には、相当の地代(土地の相続税評価額の6%程度)を支払うという方法があります。こうすれば権利金を支払わなくても、借地権の認定を受けることはありません。ただし、相当の地代は、一般的な地代と比べるとかなり高いものですから会社の支払能力や地代収入に対する社長の所得税の問題は解消されないことになります。
 そこで、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に届けるという方法があります。
 これは、会社(借地人)と個人(地主)が連名で、将来無償で土地(借地)を明け渡すということを届け出るものです。そうしますと、借地権そのものが存在しないのと同様となり、「借地権の認定」はありません。そして契約解除時などには、会社から個人へ土地を無償で明け渡すことができ会社は社長から立退料を受けとらないでいいことになります。
 なお、この届出書を提出しても相当の地代と実際に支払われている地代との差額については、地代が認定されることになります。けれども、認定される差額地代と会社の地代を支払わないことによる受贈益は相殺されるので、会社には課税されません。さらに社長個人については、実際に受け取っていない地代に対して収入したとみなされることはないので、社長に所得税は課税されません。
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