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12.管理職の時間外・休日出勤手当についてのポイントは?


あなたの会社に部長、課長と呼ばれる人がいると思います。この方々が他の社員と同様に時間外労働や休日労働を行った場合、それに対応する割増賃金の支払いはどうしていますか。役職手当を支払っているから、管理職なのだから割増賃金の支払いは必要ないと考えていますか。それの是非について書いていこうと思います。

労働基準法(以後「労基法」)で定められた労働時間(法定労働時間)を超えて労働させる場合は、三六協定の労働基準監督署への届出と残業を命じることができる就業規則の規定、そして残業させた場合には割増賃金の支払いが必要であることは、すでにご存知のことと思います。ところが労基法第41条2号は、「監督もしくは管理の地位にある者」に対しては、労働時間、休憩、休日に関する労基法の規定は適用しなくてよいとしています。つまり労基法41条にいう管理監督者については時間外手当や休日手当を支払う必要はないのです。ただし、深夜手当は除外していませんので必要です。
そこで問題なのはあなたの会社の部長、課長という肩書きの人が労基法41条で定める管理監督者として取扱ってよいかということなのです。労基法は41条でいう「監督もしくは管理の地位にある者」すなわち管理監督者とは、局長部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理に関して経営者と一体的な立場にある人であり、役職名にこだわらず実態で判断されます。この点について、行政通達は『職制上の役付者であればすべて管理監督者となるわけではない』とし、『労働時間、休憩、休日等に関する規則の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、労働時間等の規制になじまない立場にある者』としています。また賃金等の待遇面についても『定期給与である基本給、役付手当等においてその地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナスなどの支給率、その算定基礎賃金など一般労働者に比べ優遇措置が講じられているか等も留意する』としています。
これらをわかりやすくまとめると次のような判断基準となります。

(1)経営者と一体的な人(経営方針の決定に参画できる、労務管理上の指揮権限を有する人など)
(2)出社、退社について厳格な制限を受けない人(自己の勤務時間について自由裁量を有する人など)
(3)賃金等に関して、その地位にふさわしい待遇がなされている人

以上のことからみると、役職名がついているからとか、役職手当を支払っているからといって、そのすべてが労基法41条の「監督もしくは管理の地位にある者」に該当するわけではないことになります。部長とか課長とかの名称に関係なく、その実態が問われるのです。

もし、労働時間や労務管理が一般労働者と同じようになされ、課とか部とかのひとつの組織の長でもなく、部下もなく権限もないということであれば一般労働者と何ら変わりはないため、時間外労働の管理と残業手当の支払いは必要となるのです。

個々の会社の例はその実態をみなければ何ともいえませんが、もし、管理職なのだから残業手当など支払われないのがあたりまえであると思っておられたなら、少し考え方をゆるめてみて下さい。肩書きだけで、先に述べた判断基準に満たないような場合は一般労働者と同様な管理と支払いが必要となる場合が多くあると考えられます。名称や肩書きだけで残業管理や手当の支給が免除されるわけではないことを知っておいて下さい。


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