10.退職、解雇についてのポイントは?
(1)退職と解雇の違い
従業員が会社をやめることは"労働契約の終了"を意味しますが、それには退職でやめる場合と解雇でやめる場合があります。「解雇」とは使用者側から従業員に対してする一方的な労働契約の解除のことであり、「退職」とはそれ以外の労働契約の終了のことを言います。従業員が会社をやめる場合に、それが解雇なのか退職なのかの違いで法律上の大きな問題が生ずることがあります。例えば、解雇であれば、「解雇予告」や「解雇予告手当ての支給」の有無が問題になりますし、雇用保険では離職理由の如何によって給付日数及び給付制限に違いが生ずることがあります。従業員がやめる際には、その理由を双方が確認しておく必要があると思われます。
(2)従業員による一方的な無断退職は認められるのか
従業員が退職する時は、本来使用者に退職する旨を事前に申し出て、その後使用者が退職の了承をするのが原則です。しかし、それをせず従業員が一方的に会社に退職を通告したり、ある日突然出社しなくなり無断で退職をしてしまうこともありますが、これらはどうなのでしょうか。結論から言いますと、使用者が一方的に労働契約を解除しやめさせる解雇には法律上いろいろな規制がありますが、従業員が一方的に退職することについては規制がないということになります。民法上期間の定めのない契約はいつでも解約の申入れをすることができ、2週間経過すると効力が発生します。たとえ会社の就業規則に退職する時は1ヶ月前までに退職の申し出をすることと定めてあっても、退職の意思表示があった翌日から2週間たつと使用者の承諾がなくても退職の効力が発生することになるのです。
(3)解 雇
解雇の場合は(2)で述べた退職とは違い使用者の一方的な労働契約の解除であり、それは従業員の生活に大きな影響を与えることになるので、法律上種々の制限が加えられ、保護が図られています。まず民法は合理的理由のない社会通念上相当と認められない解雇は無効としています。また労基法等では次のような解雇制限をしています。●国籍、信条、性別等を理由とする解雇の禁止 ●業務上の負傷疾病による休業、産前産後休業中及びその後30日以内の解雇禁止 ●婚姻、妊娠、出産、産休、育児、介護休業を理由とした解雇の禁止などがあります。では、解雇が有効となるのはどんな場合でしょうか。図式してみました。(右図参照)
(4)解雇予告と解雇予告手当
従業員を解雇しようとする場合は解雇予告をするか、解雇予告手当を支払うことが労基法20条で定められています。(一)少なくとも30日前に解雇の予告をする(二)予告をせず即時解雇をする場合は30日分以上の平均賃金を支払う、とあります。まず30日前の解雇予告ですが、予告をした日の翌日が起算日となります。つまり、予告の日と解雇の効力発生日との間に中30日間が必要です。これがなされた場合は解雇予告手当は不要です。30日分の平均賃金を予告手当として支払うことで即時解雇も可能です。この場合は解雇予告の必要はありません。尚、予告期間が不足する場合は不足分を解雇予告手当を支払うことで補うことができます。例えば、解雇予告を10日前にした場合は20日分以上の平均賃金を予告手当として併せて支払えば、労基法上の解雇予告の要件は満たしたことになります。最後に注意していただきたいのは、この労基法上の解雇予告の要件をきっちりやったからと云えども、(3)で述べた解雇そのものに正当性がある等有効な解雇要件を満たさなければ有効な解雇とはなりませんのでご注意下さい。
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