7.中途採用者の賃金の決め方は?
中途採用者の賃金の決め方は非常に難しい問題です。これについては、まず3つのグループに分けて考え方を明確にした方が良さそうです。
(1) 年齢でいうと20代前半まででの学校卒業後あまり年数が経っておらず、
しかも社会人としての経験がほとんどない場合。
(2) 他からの転職者で社会人の経験としてはまずまずある場合。
(3) 経営上、特定の専門能力を必要としている場合。
(1)の場合は新卒初任給に準ずるのが妥当でしょう。年齢給を支給している会社では、年齢給については本人の実年齢通りに決定するのが一般的ですが、一定年数については学校卒業年齢からスタートするということも実際には行なわれていることです。尚、新卒を採用していない会社でも、新卒初任給をあらかじめ毎年度決めておくことが重要です。
(2)の場合は、判断に迷うところです。これについては、どちらかというと(1)に近く、情報処理事務異業種の営業など自ら職種の転換を希望している場合から、前職での業務経験を100%考慮する場合まで広くわたります。
前者の場合は、社会人としての一般的経験と年齢に即した生活給の観点から決定するのが妥当です。すなわち年功給的な部分は十分考慮するのが職種経験がないだけスタート時には割り引くという考え方です。後者の場合は、社内での同程度の経験者(標準的な新卒同年齢者)が判断基準となります。これらの中間の場合には、前職の職務経験の何割を評価すべきかということになります。
(3)の場合には、その人の持つ専門知識・能力・経験をどう評価するかということにかかっています。この基準はそれまでのキャリア・保持資格の評価・前の勤務先での年間給与額であり、またその人に対する漠然とした期待度というべきものを加味しつつ、これに社内での新卒同年齢者や類似の職務経験を持つ社員とのバランスを配慮しながら決定するということになります。
いずれにせよ、最近、能力主義とか成果主義賃金が言われていますが、中途入社の場合には、実際の勤務評価を行なう前の乏しい判断材料の中から決定せざるを得ません。また入社後にアップさせることはできてもダウンさせることは難しいものになってきますので、その後の調整ルールを決定しておく必要があります。例えば、
- 資格等級制を導入している会社については、正式格付けを1年間見送り、当初は暫定のものとする。
- とくに(3)の場合で、社内の同一年齢者よりも高くなる場合については、1〜2年の期間保障として、基本給は低めに抑え、中途採用調整給や期間内の賞与時に差額を特別上乗せする形で支給する。(場合によっては採用一時金・転職準備金の名目で別途支給する)
- 人事考課・目標達成度によって賃金が変動する要素を織り込む。
などがあげられます。
当然ながら入社にあたってはきちんと本人に説明を行ない、入社後のトラブルがないように細かい気配りが必要です。
以上は一般的な考え方ですが、重要なのは各社ごとの人材ビジョンに沿った賃金基本方針です。これを明確にして考え方や基準については社員にも説明できるように、客観的で公平な仕組みを設けることが必要です。また中途採用という言葉自体、入社後3〜4年の一定期間のみの過渡的措置を表わしたものと、以降は全く人事制度では関係がないとするのがこれからは望ましいと考えられます。
なお、50歳以上の高年層については、異なる判断が必要になってきます。
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