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6.社内旅行中のケガについての労災は?

 社内旅行を実施している会社は多いのですが、この時に発生したケガについての対処方法を正確に知っている人は以外に少ないと思われます。この時のケガは業務上なのでしょうか、業務外なのでしょうか。業務上ということは仕事中ということであり、労災保険の給付が受けられるということになりますが、業務上でなければ健康保険の給付の対策となります。
 業務上災害とみられるかどうかは「業務遂行性」(労働者が事業主の支配下、管理下にある状態)と「業務起因性」(業務とケガの間に因果関係が存在すること)が認められなければなりません。
 そもそも社内旅行は業務といえるのでしょうか。たしかに社内旅行は会社が主催するもので、たとえウィークデイに実施されても賃金がカットされない場合がほとんどですので、出勤扱いと考えられます。そして会社がその費用の一部もしくは全部を負担しており、参加するのが当然と思われています。その意味では、社内旅行に参加することは一つの業務であるかも知れません。
 しかし、労働契約上の当事者が業務と認めることと、業務上災害かどうかという場合の業務とは別問題で、特に後者の労災保険上の業務とは客観的に判断されます。この判断認定は労働基準監督署が行います。
 本来、業務上の判断基準の業務遂行性と業務起因性を認めるためには次の要件を満たすことが必要とされています。

(1) その社内旅行に労働者を参加させることが社会通念上必要と認められること。 (2) 労働者が社内旅行に参加することを事業主より強制されていること、など。

 具体的には、事業主の主催のもとに実施され、労働者を参加させることが労務管理の為に効果があると一般的に認められ、参加するについては旅費、日当等が支払われ、参加当日は通常の出勤として取り扱われること、すなわち参加しない者については欠勤扱いとなるものでなければならないということになります。
 最近の社内旅行の例を見ますと、その参加について労働者の任意に依る申込制であったり、社内旅行が会社の休日にあてて実施されており、たとえ不参加であっても、もともと休日なのだから欠勤扱いとはならない、といった例が多く見うけられます。
 このような旅行への参加が労働者のそれなりの自由な裁量がある場合や、また参加が一種の強制状態にあった場合でも、逐一使用者の指導命令下にある訳ではないと思われます。また何よりも旅行は本質的に会社の従業員に対する福利厚生の一貫としてのレクリエーションであって、本来従事している業務とは全くの別なものであるので、これを労働とは言い難いのではないでしょうか。労働基準監督署の過去の認定例をみても、社内旅行中に起きたケガについて業務上と認定された例は少ないのが現状です。
 しかし全員について旅行を業務としてみることは困難であるとしても、その計画の立案から旅行当日の団体の世話係を上司から任ぜられた社員、いわゆる幹事にとっては、その旅行中全部とは言えないとしても一つの特命業務の遂行としてみることはできます。幹事が個人的興味から旅程にない名所に単独で行ったというような特別な事情がなければ、幹事の旅行中の行動全体を通してその業務遂行性と業務起因性は認められるのではないでしょうか。つまり、社内旅行中のケガは幹事に関してのみ業務上災害として認定される可能性があると思います。

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