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4.試用期間の取扱いは?


 会社が従業員を雇い入れる場合、雇い入れの日から本採用としないで入社後一定期間、試用あるいは見習い期間を設けて、その間における本人の勤務状況等からその適性能力等を判断し、特に問題がなければ試用期間満了と同時に本採用として雇い入れるとする制度を多くの会社がとっています。この趣旨は、一般に面接や筆記試験ではわからないような本人の職業能力適性、人間性などを一定期間実際に働かせてみて判断して正式採用を決めようとするところにあります。

法的性格
 試用期間の法的性格については、各企業における試用期間の内容、取扱いの実情如何によってさまざま考えられますが、一般には、労働関係開始後に試験的に勤務状況なり適格性をみる一定期間とされていますので、それらの状況の如何を理由とする確約権を留保した労働契約の期間と考えられます。

試用期間中の解雇
 試用期間なのだからその中途、もしくは満了時に解雇してもかまわないのだろう、というご相談がよくあります。確かに法的には試用期間中は通常より広い解約権が認められてはおりますが、これを適用して認められた例はほとんどないのが実情と思われます。つまり、試用期間中の従業員も他の従業員と異なることなく労働基準法の一切の規定が適用されるのです。試用期間と云えども本採用になってからと労働関係はあまり変わりがないのです。確かに試用期間中の解雇については、解雇予告は必要ありません(労基法第21条)。しかし、試用期間中と云えどもその人が14日を超えて引続き雇用されている場合は、各会社の就業規則等に定められている試用期間の長さに関係なく、解雇予告又は解雇予告手当が必要となります、と云うただし書つきなのです。

試用期間と社会保険
 試用期間は本採用ではないのだから、いつ会社をやめるかもわからない。だから雇用保険、健康保険、厚生年金保険等の社会保険の加入の手続は本採用になってからで良い。と思われている会社が未だ多く見うけられます。各保険制度には被保険者の適用除外がいくつかあります。しかし、これらの保険の適用は強制的なもので、事業主の判断や従業員個人の意思によって適用の有無を決めることは認められておりません。すなわち、試用期間中の者と云えども適用除外に該当しないのです。試用期間中の者であっても、最初に雇い入れた日をもって取得することが義務づけられております。税務署による税務調査が行なわれておりますのと同様に、社会保険事務所では社会保険総合調査を実施しています。これは社会保険事務所からの呼出し調査で労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等を持参の上調査を受けるのですが、この調査でよく指摘される点として、試用期間中の未加入問題があげられます。社会保険の取得日と出勤簿等によるずれ、すなわち本採用になった日付での取得と試用期間を含む採用日のずれが指摘されるのです。そして取得日の溯りと差額保険料の徴収を指導され、今後の取扱いの注意を受けることがあります。

まとめ
 会社の就業規則等で試用期間を設けるのはご自由です。が、試用期間だからと云ってすべてが会社の思いどうりにできるわけではありません。むしろ本採用と試用期間中はそんなに大差がないものだということを知っておかれた方が良いと思われます。そのことが将来的なトラブル発生の可能性を少なくすることだと思います。

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