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6.資金繰りに苦労しないためには?

(1) 借金をしない

 資金繰りに苦労する最大の原因は借入金の返済でしょう。すべての投資を自己資金で行うことが経営の基本です。この場合の自己資金とは、キャッシュフロー計算書の経常収支のプラスの金額、つまり通常の営業をすることにより手元に残った資金のことです。この資金は純利益や減価償却費が多くなると増えます。常にこの資金の範囲内で投資をしていれば資金繰りに困ることはありませんし、このような経営が理想です。


(2) 利益の範囲内での借金

 もちろんすべて自己資金で経営することは現実的ではないことが多いでしょう。その場合は借り入れをすることになりますが、その借入金でした投資による利益で返済ができなければなりません。すなわち、借入金の返済期間の年数のその投資による利益を見積もり、毎年のその利益(税引き後)にその投資の減価償却費を加算した金額が返済原資になります。その金額が毎年の返済額より多ければ心配なく返済ができることになります。ただし、予想は堅実に立てると同時に、不幸にして予想通りでなかった場合でも経営が破綻することがないようにしないといけません。借入金は会社の体力と比較して過大であってはならないということです。


(3) 売掛債権の回収を早くする

 売掛債権の増大は資金繰りを悪化させます。できるだけ売掛金と受取手形のサイトを短くする必要があります。言うまでもないことですが、資金繰りが苦しいといって得意先にサイトの短縮を依頼すると、信用不安になりかねません。得意先には約定通りのサイトで支払ってもらえるように交渉し、少しでも(通常は3日程度)遅れた場合は速やかに催促する管理体制が必要です。こうすることで不良債権の発生を未然に防ぐという効果もあります。


(4) 棚卸資産の回転を良くする

原材料、製品、商品等の棚卸資産も、その増大は資金繰りを悪化させます。常に内容をチェックして不要な棚卸資産を手元に置かないようにしなければなりません。回転率の悪い棚卸資産は、陳腐化したり倉庫費用等により損失発生の原因にもなります。


(5) 利益をあげる

資金余裕を生じさせる最もよい方法は利益をあげることです。利益は自己資本を増大させ、自己資本の増大は資産内容を改善させます。利益を計上すると法人税が課税されますが、その比率は41%です。残りの59%は、配当や役員賞与などで社外に支払わなければ投資をしたり、負債を返済したりと自由に使うことができます。


(6) 不要な資産を売却する

使われていない機械、土地、ゴルフ会員権などの遊休資産のうち含み損のあるものは直ちに売却すべきでしょう。売却損が出れば法人税を減額させることもできますし、何よりも売却によって何がしかの現金が入れば資金繰りに役立ちます。含み益のあるものについても基本的には遊休資産である限り売却すべきでしょうが、その前に有効活用が可能かどうかを慎重に判断する必要があるでしょう。活用することによる利益、保有コスト、売却収入の運用益、法人税負担などを総合的に考えて判断することになります。

(7) 投資家を募って増資する

 自己資金を増やせば負債が減り、資金繰りが楽になります。そこで、増資することが最も手っ取り早い自己資本を増やす方法なのですが、オーナーには資金が無い。そのような時、会社を応援してくれる投資家がいて増資に応じてくれたらすべてがうまくいくでしょう。
そのためには、投資家が資金を出したくなるような魅力的な会社である必要があります。ほかの会社には無い技術力、アイデア等があり、近い将来成長が確実であると思われるような会社ならきっと多額の増資に応じてくれるに違いありません。
ただし、増資に応じてくれるということは株主になるということですから、会社の経営に対して発言権を持つということです。会社経営を透明にすることは当然として、あまり多くの株式を他人に所有されると、社長の独断では経営ができなくなるかもしれません。一般的には他人の株式を議決権の1/3未満にするとよいでしょう。そうすれば、株主総会での特別決議に必要な議決権が確保されるからです。

(8) 株式を公開する

 株式公開は経営者にとって大きな目標です。公開できれば、株式市場から大きな資金を集めることができるばかりか、多額の創業者利益が得られます。会社にとってばら色の未来が開けるでしょう。
ただ、今のような株価低迷が続くようならあまり期待できないかもしれません。また、公開するためにはその準備にかなりのエネルギーと多額の費用がかかります。さらに、公開したあとはパブリックカンパニーとして経営に対し社会的な責任を負うことになるでしょう。


(9) 資金繰り予定表を3ヶ月先まで作る

 どのように資金調達しようと、どんぶり勘定では経営はできません。しっかり予算を立て、計画的な経営が求められます。そして、資金の予定は少なくても3ヶ月先まで見通さなければなりません。資金需要には波があります。年間通して考えると十分資金余裕があるようでも短期的には不足することがあります。
そこで常に資金繰り予定表を作成し、いつどのような資金を準備する必要があるかを知っておくべきです。そして、資金繰り予定表は必ず実績と比較をしてください。違った場合、なぜ違ったかをチェックし、より精度の高い資金繰り予定表を立てられるようにするとよいでしょう。
このようにして常に先のことがわかるようになると、たとえ銀行しか頼るところが無い場合でも、その姿勢は必ず評価してくれ、借り入れがしやすくなります。

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