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3.月次決算のメリットは?

<3>貸借対照表の分析でわかること

(1) 賃借対照表について
賃借対照表は、会社にあるすべての財産と負債をその性質ごとに明らかにし、その差額である資本の部の金額を算出するものです。
また、その月次決算での分析は、支払い能力を中心とした安全性と、資産負債の各科目の内容分析、及び期首との数値を比較することによる増減分析が中心になります。
まず、各科目の内容に目を通してみてください。
最初は流動資産です。流動資産とは、資産のうち原則として1年以内に現金化できる資産です。流動資産には、現金預金、受取手形、売掛金、商品原材料などの棚卸資産、仮払金などがあります。受取手形、売掛金は予定どおりに入金されるか、棚卸資産は売れにくいものはないか、仮払金などの仮勘定の精算予定は明確か、等を注意してみていきます。
固定資産は、土地建物、機械や備品、保険積立金、ゴルフ会員権などがその主のものですが、その資産が実際に会社の資産として使用されているかという観点から見ていきます。すでに廃棄されていたり、資産価値がなくて将来とも使う可能性がないものは除却しなければなりません。また、期首と比較して増減したものの内容を把握します。

 次に負債の部です。買掛金は、その月に仕入れた商品や材料費などがすべて計上されているかを確認します。20日締めのような場合、締め後の計上を忘れることがあるので注意が必要です。未払金、預り金などは、残高が正しく計上されているか、すなわち何時発生したものかを正確にわかっている必要があります。
 借入金は、銀行などの返済予定表と照合して残高を確認します。

(2) 役員との取引には特に注意
 役員との取引は、月次決算を大きくゆがめることがあるので要注意です。まず仮払金です。社長は気軽に経理からお金を仮払いしますが、忙しいこともあってその精算が延び延びになることが多いようです。ところが、未精算となったまま月を越えると、本来その月の費用になるはずの支出が計上されないので、実体より利益が多く出ているように見えてしまいます。
 未精算の仮払金よりもっとたちが悪いのが役員貸付金です。会社は利益が出るとその利益を次の投資や賞与の支払い、借入返済などに充てることができます。ところが役員貸付金はその利益を丸ごと引き出してしまうことになりかねません。
 本来役員がお金を必要とするときは役員報酬を増額してこれにあてるべきなのです。役員報酬を増額すると利益が減りますが、その減った利益こそがその会社の本当の収益力なのです。すなわち役員貸付金は、利益を水増ししてみせるばかりでなく、その架空の利益をも丸ごともっていってしまうという、最悪の取引なのです。
 なお、役員報酬を期首以外の時に増額すると、利益調整と見られて税務署から否認されてしまうおそれがありますので注意が必要です。
 さらに、役員の個人資産を会社で購入してしまうケースがあります。個人でしか使用しない乗用車や別荘などがこれにあたります。これも役員貸付金と同様の結果となるばかりか、税務署から、その資産の使用料を役員報酬として課税されたり、最悪の場合役員賞与としてその資産の購入代金を丸ごと課税されることにもなりかねません。  


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