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3.月次決算のメリットは?

<1>概要

(1) 月次決算のメリット
 決算とは年に一度と思っている経営者の方が多いのではないでしょうか。
 確かに決算とは大変手数のかかるものであり、棚卸をするだけで相当の労力を要します。そんなことを毎月なんかとてもやっていられない。そんな閑があったら少しでも売上を上げた方がよっぽど会社のためになる。と思われる経営者の方の気持ちは良くわかります。ところが毎月決算をすると、会社にとってとても有利なことがたくさんあるのです。確かに手数はかかりますが、ほとんどの会社では月次決算の手数より、月次決算をすることによる利益の方が大きくなるでしょう。
 では、具体的に月次決算ではどんなメリットがあるのでしょうか。

(2) その月までの利益が正確にわかる
 社長さんにとって我が社の利益は数字を見なくてもほぼわかっているのかも知れません。確かに数字を見なくてもほぼ正確に利益をご存じの社長さんもいらっしゃいます。しかし、月次決算の数字は社長さんがわかっていらっしゃることよりも遙かに多くのことを教えてくれます。それは、部門別売上高、変動費率、主要費目の増減、これらの前年同月比、前月比、総資本利益率、売上高経常利益率、自己資本比率、等々です。これらの数字の算出方法および活用方法は後ほどご説明しますが、これらの数字を毎月チェックすることで会社の様子が以前より遙かによくわかるようになるでしょう。

(3) 予算と比較する
 年度始めに予算を作成していることと思いますが、この予算と月次決算、特に損益計算書とを比較することで、会社のどこが問題点なのかをはっきり知ることができます。予算を作成するときには、その数字の作成基礎があると思います。たとえば、売上の増加については、設備投資をして生産能力を10%向上させた、営業の人数を増加させた、新商品を投入した、得意先が増加する見込みだ、等の前提があるはずです。また経費の増減については正社員をパートに代えた、新規に何名採用した、社員旅行予算を増やした、借入利率が減少した、等です。これらの予算数値と月次決算を比較し、何が違ったのかを検証し、直ちにその対策をたてなければなりません。また、忘れてはならないのは、予算を立てるとき。そのことがなぜ予測できなかったのかという事です。これをきちんと分析する事で予算の精度がどんどん良くなって行くはずです。したがって、月次決算の数値が予算より良いときにも分析検討する必要があるのです。

(4) 決算予想をする
 前月までの経営成績が正確にわかったら、今期の予想もかなりの精度でわかるでしょう。すなわち、月次決算の数値を参考にしながら、今後の経営の予想をしてみるのです。
 まず、売上を予想してみてください。経営者自身が一定の根拠で予想できれば最高ですが、それが難しければ、前年同月の売上に今期の伸び率をかけるなど、簡単な方法を採ってもかまいません。ただ大事なことは現時点で予想できることがあれば、できる限り予想の中に組み入れることです。
 次に、変動費率、給料や家賃などの固定費の変化をできる限り予想します。特に変動費率の予想は業種によっては難しいかも知れません。その場合は前期の変動費率や今期実績を使っても良いでしょう。売上高から変動費及び固定費を差し引いて今期の利益を算出します。
 このようにして算出した利益が満足できるものであるかもう一度ながめてください。利益には通常50%近くの税金がかかりますのでその納税のことも考えなければなりません。もしかすると赤字かも知れません。もし満足できる利益でなかったら、その改善方法をもう一度考えてみる必要があります。また幸いにして予想を上回る利益が見込めるようでしたら、節税策を考える必要があるかも知れません。節税は、早ければ早いほど有効です。ましてや決算期を過ぎてしまったら、ほとんど打つ手はなくなるのが通常です。

(5) 月次決算手続きのやり方
 経営分析は年度決算の専売特許と考えておられる経営者の方が多いようですが、月次の経営分析は年度決算と同じくらい重要であり、またとても早く会社の経営状態を教えてくれるので、日常の経営判断に欠くことのできないものです。
 月次の経営分析には、月次決算の手続きが必要になります。売掛金、買掛金を毎月計上することはもちろん、賞与の年間支給予定額の月割額や減価償却などのその月に対応する金額を計上する必要があります。また、製商品、仕掛品、原材料はできるだけ正確に棚卸しをする必要があります。ただし、月次決算の場合は若干簡便な棚卸しをしてもよいでしょう。たとえば、商製品の出納帳をつけている場合はその帳簿上の金額を使用する、主要なものだけを棚卸しして細かいものは期首と同額と見なすなどの方法です。
 これらの数字を月次の試算表に反映させれば月次決算書は完成です。
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